脳は空より広いか
- 作者: ジェラルド M.エーデルマン,冬樹純子,豊嶋良一,小山毅,高畑圭輔
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2006/12/01
- メディア: 単行本
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非常に評価が難しい本です.ただし,読んで勉強になりました.一番勉強になったのは,わたしはこういう理論化にはあまり興味がないのだということでした.
この本でエーデルマンは脳が組みあがる過程を自然選択から説明します.また,脳の機能単位の生成には基本的にはヘッブ型の学習規則が用いられており,同期と繰り返しにより組織が起こると説明されます.まあ,ここまではよくある話でしょう.もちろん,脳の部位ときちんと絡めた議論をしている点は非常にすばらしい.
この本でのエーデルマンのオリジナリティは意識を生み出す過程として「オリジナルコア」を提唱したことだと思います.これは視床と皮質をつなぐネットワークに由来する機能でこれが刻一刻と変わるわれわれの意識を司っているとされます.
このオリジナルコアが個人的には余りピンと来なかった.意識の因果的な説明になっていると言うより,わたしに脳内機構における代替物のようにしか読めませんでした.もちろん理解が足りないのでしょうか,意識の持っている表面的な特性と視床と皮質をつなぐネットワークの特性に類似したものがある,としか読めませんでした.
加えて,モデルの実証的検討についてほとんど書かれていないのも個人的には欲求不満でした.まあ,筆者自身がそういう目的の本ではなく,理論を解説するためのもんですよといっているわけでしょうがないのですが.
意識をはじめとする精神的な現象はまだまだ事実を博物学的に集積する段階だとおもうんですよね.まだまだ集め切れていないおもしろい事実がたくさんあるはずです.そういうのに引っ張られて理論ができるのをどうしても期待してしまうところがあります.そんな個人的な嗜好とこの本は必ずしも一致しませんでした.