女性は生む機械

柳沢厚生労働大臣の「女性は生む機械」発言にたいし激しい論調で非難がなされています.ネットで引っかかってきた毎日新聞の社説ですと,女性蔑視の発言で開いた口がふさがらないというようなことが書かれています.

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070130k0000m070108000c.html


マスコミ報道の論調としてはどこもそんな感じです.


ただ,この発言の要旨を読む限り,適切とは言えない表現かもしれませんが,辞任を要求したり,首相の任命責任を問うたりするような発言ではなかったとわたしは思います.ひどい女性蔑視とも思いません.

報知新聞に載っていた要旨を以下に引用します.

 ◆柳沢厚生労働相発言要旨 なかなか今の女性は一生の間にたくさん子どもを産んでくれない。人口統計学では、女性は15〜50歳が出産する年齢で、その数を勘定すると大体分かる。ほかからは生まれようがない。産む機械と言ってはなんだが、装置の数が決まったとなると、機械と言っては申し訳ないが、機械と言ってごめんなさいね、あとは産む役目の人が1人頭で頑張ってもらうしかない。(女性)1人当たりどのぐらい産んでくれるかという合計特殊出生率が今、日本では1.26。2055年まで推計したら、くしくも同じ1.26だった。それを上げなければいけない。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20070130-OHT1T00025.htm より一部抜粋

上を読んでわかるように「女性は生む機械」発言は,話を分かりやすくするための例え話です.また,大臣自身,この例えが必ずしも適切でないことを認め,ことわりをつけて発言しています.「ごめんなさいね」とまで言っています.

人間を機械に例えることはそんなにおかしなことですかね.もちろん母性というものは特別なものです.神聖なものといっても良いかも知れません.この例えを気に入らない人も多いでしょう.ですから,この発言が政治家として適切であったとはわたしも思いません.それでも,ただの例え話,しかも本人がよい例ではないと謝りながら述べている例え話にたいして,ヒステリックな糾弾をする必要がどこにあるのでしょうか?「ごめんなさいね」と謝っている様子などはむしろ女性に対する気遣いが見えるくらいです.少なくとも女性蔑視とはほど遠い態度です.

人を機械に例えたからと言って,人を機械として扱っているわけでないのは自明のことです.認知心理学ではヒトをコンピュータという機械に例えますが,ヒトを機械として扱っているわけではありません.進化生物学の語り手Richard Dawkinsは,ヒトを乗り物に例えますが,ヒトに乗ったり荷物を載せたりすることはありません.

今回のような言葉尻をとらえたヒステリックな糾弾は非常に馬鹿げていると思います.