The namesake(*1)

The Namesake

The Namesake

インドから移民してきた家族の一代記.アメリカに留学した父親がインドから花嫁を迎える.彼らに子どもができ,やがて成人する.とまあこう書くとなんてことはない話なわけです.でもねえ,すごく良い.個人的にややオーバーラップする所があるせいかなんかものすごく引き込まれて,こころを揺さぶられてしまいました.

揺さぶられたところの一例:異国の地ではじめての子どもを生む母親.彼女が抱える不安.習慣の違い見せるとまどい.泣きやまない子どもに途方に暮れる様子.こういう描写はすごく身につまされる.胸が締め付けられるというんですかね.一方で勇気を出して子どもとはじめての外出をしたとき,周囲の人から受けるやさしさ.子どもが受ける賞賛の声.それとともに母親にわき上がってくる達成感と勇気.読んでいてすごくあたたかい気持ちになります.

これは冒頭の1シーンです.わたしがこうしてまとめるといかにも使い古された題材のように見えることと思います.その通りかもしれません.この本の題材はまったく斬新なものではありません.しかし,題材の斬新さだけが小説に重要なのではないことをこの本ははっきり示しています.あたりまえの日常を丁寧に描くことで圧倒的にこころを揺さぶることができることを思い知らされました.

子育てだけじゃなくて子どもが両親に抱くアンビバレントな感情もとても良くかけていると思う.それだけではなく一生をかけて変化する子から親への思い,逆に親から子への思いもとても良く書けています.

ほんとにね、掛け値なくいい本.


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*1 以前、余所で書いたものを転載しました.日本語訳もあるようです.

その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)