学位論文にある2つの基準:ゆるい基準あるいは最低基準

学位論文に関して興味のあるロテ職人さんのエントリーがありましたのでわたしもひとつ書いてみることにしました.



学位論文は大きく分けて,学士論文,修士論文,博士論文,それぞれ通称,卒論,修論,博論の3つがあります.なじみがいいので以下はすべて通称で呼びましょう.

学位論文に関して,どのくらいのレベルのものをどのくらいのボリュームで書けばよいのかよく質問されることがあります.答え方はケースバイケースです.世間話なんかではゆるい基準で,まじめに答えなければいけないときには厳しい基準でわたしは答えています.

ゆるい基準は昔からよくいわれている奴で


卒論=参加賞,修論=努力賞,博論=免許証


という奴ですね.どこかで聞いたことがある人も多いと思います.

まず.卒論なら当該分野の約束事を守り,大学が定めるルールを満たしてなにか書いてあればよい.とにかくやってみるという意味で参加賞と呼ぶのにふさわしい側面があります.なお,大学が定めるルールを満たすのはどの学位論文でも求められることです.なので以下では省略します.

修論なら当該分野で価値のあるリサーチクエスチョンを出し,それに対し頑張っている形跡が見られればよいでしょう.出てきた結果はとりあえず問いません.結果を問わないところが努力賞と呼ばれる由縁でしょう.

修論とは違い,博論は価値のあるリサーチクエスチョンにきちんとポジティブな答えを出すことが求められます.これができるようになれば,レベルはともかく論文を書けるようになりますから,研究者としての免許が与えられることになるのでしょう.

これらが(わたしが考える)ゆるい基準です.言い換えると学位論文として認められる最低基準といってもいいかも知れません.

でもねえ,当たり前ですが最低の基準を満たすべく作業をするってのはなんとも後ろ向きで,生産的でも創造的ではありません.


何かをやるからにはそれに全力を傾けるだけの価値があるはずです.


すくなくともわたしはそう思っています.だから,やるからには上を目指すべきでしょう.少なくともその方が研究はおもしろい.では,上の基準,あるいは厳しい基準は...というのは長くなるので次回にまわします.