THe memory keeper's daughter

The Memory Keeper's Daughter: A Novel

The Memory Keeper's Daughter: A Novel

若い夫婦に双子が生まれる.男と女の赤ちゃん,ただし,女の子にはダウン症という障害があった.父親の判断で女の子は死産だったことにされ,施設に送られることになる.しかし,送り届ける役を引き受けた看護婦が女の子を自身で育てることを決断する.物語は健康な男の子を育てる若い夫婦と,ダウン症の女の子を育てる看護婦の2つの場面に分かれて進む.若い夫婦は社会的に成功していくが,父親の決断とそれに伴う嘘が家庭内をどろどろした得体の知れない闇となり家族を蝕んでいく.一方,看護婦は苦しみながらも小さな出来事に幸せを見出していく.

といった感じで話は進むわけです.家庭を舞台に幸せとは何かっつーのを基本的には書きたかったんだろうなあと思います.物質あるいは経済的な幸せと精神的な幸せを,図式的に対立させてうまい効果を上げていると思います.

実際ね,はなしの持って行き方がうまい.泣かせるっていうんですかね,盛り上げるところではきちっと盛り上げるし,背筋が寒くなるようなところではほんとにゾクゾクさせます.感情的にうまく動かしてくれる本です.

あとね,小道具がうまい.ダウン症の女の子がはじめてものを握る瞬間とその場面設定は見事でした.また,最後の方では歌が象徴的に使われていて,贖罪,赦し,癒しというキーワードでまとめられるようなすばらしい読後感を与えてくれます.

はなしの流れも飽きさせない.ちょっとびっくりする展開もあってとても良い.riveting page-turnerって評価も頷けますわ.