村上春樹はくせになる
- 作者: 清水良典
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/10
- メディア: 新書
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わたしにとって,新作が出たらとにかく読む作家が村上春樹です.わたし自身語り倒したいことがあるんですが,それを新書でやった幸せ者がこの本の著者です.カフカ賞受賞以降,次のノーベル賞候補と騒がれるようになったこともあって,こういう本も増えていくのかなと思います.
この本のいいところは,「ともかくおれ村上春樹好き」という部分が出ているところ.ファンが思いの丈を一生懸命ぶつけている感じとても良いです.
冒頭はわりと抑制が利いているんですが,ページが進むに連れ自分の思いがはち切れんばかりにあふれだす感じがすごくいい.例えば,最初は「・・・かもしれない」みたいな言い回しだったのに,「***だったのだ!」みたいな感じに変わって行きます.
こういう思いこみの強い言い切りには,引いてしまうことの方が多いのですが,本書では好意による興奮のなせるわざということで,むしろ高評価なりました.
読書をするひとで村上春樹を読まないひとって結構いると思います.わたしもなかなか読まなかったほうです.でも,流行りすぎているから敬遠しているだけだとちょっともったいない.
あるいはノルウェーの森だけを読んで見限ったという人も多いと思います.わたしもあれはどちらかというと好きなほうではありません.ノルウェーの森のような恋愛系よりも,羊をめぐる冒険,世界の終わりとハードボイルドワンダーランド,ねじ巻き鳥クロニクルのような冒険迷宮系のほうを好みます.冒険迷宮系の作品はノルウェーの森しか読んでいないひとに,ぜんぜん違う印象を与えると思います.
海外の書店で最もよく見る日本人作家の名前は村上春樹です.大きめの本屋には必ず並んでいます.メルボルンではジムやカフェ,電車とかでも読んでいるひとを見かけました.そういうのを目の当たりして,わたしは村上春樹を言語の壁を超えて同じ土俵で勝負できる唯一の日本人作家だと確信しています.
それを読まないのはちょっともったいないよね.