自我が揺らぐとき

自我が揺らぐとき―脳はいかにして自己を創りだすのか

自我が揺らぐとき―脳はいかにして自己を創りだすのか

とにかく圧倒的な症例記述!半側空間無視,カプグラ症候群,フレゴリ症候群,身体失認,鏡像誤認などなど,ものすごくリアルに,ものすごく鮮烈な事例をインタビュー形式でいっぱい紹介しています.軸となるのは「自我」.これらのさまざまな症例は自我とは何かという問題を軸に紹介されています.ただの事実の羅列になってないところが良いですね.読みやすいしおもしろい.

前半が主に事例の紹介で,後半にそれらを受けての理論的な考察が行われる.わたくしの個人的な志向の問題ですが,自我に関する考察はイマイチ.わたしは,理論に証拠と伴ってないと興味がわかないんですよね.つーか,理論そのものよりも理論を実証するプロセスのほうが個人的には好きです.

ともあれ前半の圧倒的な事例は本当に引き込まれます.わたしも今こんなふうに研究を続けてるのも,学部生時代にこの本に出てくるような衝撃的な脳損傷例にものすごく惹きつけられたことが一因になってます.こういうのを読むと原点を思い出します,人間って不思議よねってつくづく思いますね.うん.

以下メモ.

  • ジェームスはカントを批判.先験的な自我は存在しない.それは魂の安っぽくてたちのわるいバージョンである.
  • カプグラ症候群を引き起こす脳損傷部位は頭頂葉.背側経路を通じ,辺縁系とコンタクトを過程で何かしらのトラブルが生じていると考えられる(ほんとか?元論文を要チェック).
  • 個人的作話をする患者は前頭葉機能に障害があることが多い.