The Pianist
美は細部に潜む.これを観て改めてそう思いました.
はなしとしては良くあるものです.第二次大戦中のポーランドが舞台.ユダヤ人のピアニストが主人公.おすぎが大絶賛(CMでやってましたよね?).これだけでだいたいの展開も結末も分かるわけです.ですから,そこにどれだけ新しいものをいれられるか,手垢の付いたヒューマニズムをどれだけ自分のものとして消化できるかっつーところが勝負になります.
で,この映画は間違いなく勝負に勝ってます.良い映画です.細部にこだわることがこの映画の勝因だとわたしは感じました.まずこだわっているところは,映像としての細部におけるリアリティーです.当時の記録映像をすり切れるほど観て,ほぼ同じセッティングを用意し,より迫力を加えた構図でそれを撮り直すという試みがいくつも観られました.例えば,銃で撃たれる女性,例えば,窓から落とされる男性,例えばゲットーをつなぐ橋を渡るユダヤ人.当時の記録映像そのままが再現されています.
もうひとつは内容におけるリアリティ.原作が自叙伝ということもあり,小説のような大仕掛けはありません.しかし,非日常的な状況(ナチスによる迫害)に置ける細かな日常的なやりとりがとても鮮烈に訴えかけます.なくなっていくお金に嘆く母親(20ズロチしかないの!),強制収容所に送られる際,主人公が妹と交わすことば(こんなときにいうのは変だけど,おまえのことをもっと良く知っていたらとおもうよ)などなどです.
細部を大切にすることで,作品は新たな輝きをみせることを再認識しました.