メルボルンの治安(2):日本との比較
メルボルンは治安が良いといわれます.ただ一概に良いといわれても,基準がはっきりしないと判断ができません.わたしたち日本人が他国の都市の治安を判断する場合,やはり,日本と比較するのがいちばん分かりやすいでしょう.
さて,日本とメルボルンどちらが治安がよいでしょうか.
今回は,兵庫県と東京都を取り上げ,メルボルンのあるビクトリア州と比較することにしました.兵庫県は海のそばにあり交易が盛んな点がビクトリア州と類似していると考えました.また,兵庫県は総人口がビクトリア州と等しいこと(およそ500万人)も,犯罪件数の比較が分かりやすくなると考えました.東京は,まあ,日本のわかりやすい代表としてとりあげました.
結論から述べますと,
メルボルンは日本より治安が悪い
です.
日豪の警察における2003年の犯罪統計資料の一部を右上にまとめてみました.
上のグラフが総犯罪件数です.一見して明らかなように,ビクトリア州の件数があきらかに多くなっています.人口が2倍以上ある東京よりも1万件近く多く,人口が同じくらいの兵庫県より2万件以上(すなわち2倍以上)多いのです.
これは愕然たる差です.
ただし,法律も警察とのつきあい方もだいぶ違う日本とビクトリア州で,単に犯罪件数だけを比べてもミスリーディングかもしれません.もしかするとビクトリア州のほうが法律が厳しく,犯罪の件数がそのために増えてしまう可能性もあります.
そこで,文化や法律によって差の出にくい,殺人の件数を比較してみました.それが下のグラフです.兵庫県県警の資料をは見つからなかったので,東京都との比較になります.殺人の件数でもメルボルンは東京を大きく上回っています.人口の差を考えるとこの差は実質的にはもっと大きいものでしょう.
日本人は水と治安を無料だと思っているとよく言われます.実際,メルボルンとの比較では,圧倒的に治安がよいことが示唆されました.日本より治安が悪いと評価されるメルボルンも世界では有数の治安の良い都市です(参照,22/02/05 世界一住みやすい街のエントリー).治安悪化が叫ばれるこの頃の日本ですが,やはりまだまだ圧倒的に安全なのでしょう.そんな日本からメルボルンにやってくるのなら,やはり,安全には充分に気を配らなくてはならないことを今回の結果は示していると思います.
調べてみたあとの感想
さて,実際調べてみるまでここまで差があるとは思っていませんでした.わたしの実感にあまり一致しません.メルボルンはわたしが住んでいた東京周辺と対して変わらないような気がしていました.実際,生活している感じからすると,メルボルンは極めて安全な土地です.わたしの近所では子供たちだけで通学していることもありますし(アメリカの都市部では考えられない),暑い日にドアを開けっ放しにしている家もあります(これまたアメリカの都市部では考えられない).おそらくビクトリア州の中でも犯罪がおこりやすい地域とそうでない地域があるのでしょう.わたしが生活している範囲はそうでない地域に含まれるため,今回調べたことが実感にあわなかったのかもしれません.
そこで次回は,メルボルン周辺の治安を比較したいと思います.
今回の比較に用いた資料の入手先は
- Victoria Police Statistical Services Division: http://www.police.vic.gov.au/showcontentpage.cfm?contentpageid=11774
- 警視庁:警視庁の統計: http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/toukei/bunsyo/toukei15/pdf/toukei_h15.pdf
- 兵庫県警:生活安全情報 犯罪統計 県下の統計:http://www.police.pref.hyogo.jp/seikatu/tokei/kenka/index.htm
となっております.興味のある方はご自身でもご検討ください.
今日のお仕事
- 分散分析型実験の開始(矢印実験,バイアス実験,ダイナミック実験)
- 注意PSE実験2分析