論文の書き方(3):書くペース

著名な科学者のblog Y日記 の少し前のエントリー研究者として成功する条件で,激しく同意するものを見つけました.webみて感心してるなんて,おまえ最近仕事してんのか,webばっかり見てんだろうと思った人は少し正解です.

^^^^ここから引用
「実行」・・・簡単なようだが、これが難しい。上で、「人並み以上の実行力」と書いた。「人並み以上」という条件は、厳しいものに聞こえるかもしれない。しかし、言うだけでなかなか実行しない人の方が多い。こつこつと実行できる人なら、時間さえかければ「人並み以上」になれると思う。

たとえば論文。毎日必ず1時間、論文の原稿を書ける人は、数ヶ月程度で原稿 を完成できる。これを実行できない人は、1年かかっても、論文が書けない。このような、ちょっとした実行力の差が、1年経てば大きな差になり、5年も経てば 圧倒的な差になる。 (以下,略)
^^^^ここまで引用

わたしはこれに全面的に賛成です.わたしも毎日少しでも進めることが大事だと思ってきました.なんでもいいから,少しでもいいから,とにかく書いて,ダメならなおす.何度もなおす.そういうやり方で論文を書いてきました.まあ,わたしはあまり集中力が長続きする方じゃないので,こういうやり方があっているだけなのかもしれません.なにせblogも「こつこつとやる」ですから.

こうやって少しずつ進める方はわたし以外にもいらっしゃいます.心理系研究者のつれづれ日記から,引用させていただくと

^^^^ここから引用
それより毎日少しでもいいから自分の論文と向き合うということが、
とても大事なことではないか、と最近感じるようになりました。
3歩進んで2歩下がる、ならぬ、3行書いて2行消すということもあります。
でも昨日より1歩でも前に進んでいることが重要です。
^^^^ここまで引用

こんな感じ.言い得て妙.こうやって地道にやってる様子を拝読すると,わたしもがんばらんといかんなあと思わせられました.

少しずつ進めるには,(1)結果の解釈を確定する,(2)論文の骨組みをしっかり作るという2つが大切だと思います.この2つは主に頭で考えるだけなので場所と時間を選びません.運動のとき,散歩のとき,運転中(あぶない),調理中(危ないし味付けがしんぱい),わたしはあらゆるときに考えています(そして家族に怒られます).あらゆる場所,時間で思いついたことは,そのままにしておくと忘れてしまうので,メモを取るようにします.あとでまとめるために見てみるとなんじゃこりゃっ,おまえバカか?てなこともあるんですが,ダメならまた考えればいいと思っています.

こういう考える作業もわたしは細切れの時間で平気です.性分なのか,机の前で考えていてもあまりまとまりません.むしろwebとか見てしまうので仕事は進みません.そんなこんなで考えていると,悪くても1週間くらい考えているとたいてい何とかまとまります.

結果の解釈と骨組みが出来たらあとは流れ作業みたいなものです.くわしい作業の順序については以前論文の書き方(1):書く順序に書きました.ここで書いたような作業工程ですと,1日1時間でも確実に進めることが出来ます.

性格的にじっくり集中してやりたい,あるいはそうでないとできないというひともいるでしょう.また,一文の表現にこだわったりする分野,ひとつのひらめきにすべてをかける分野だと事情は違うでしょう.例えば,哲学思想系や数学,理論物理系だとこんなふうに細切れに論文を書くことは出来ないのかもしれません.知りませんが.

でも,ひとつのことに集中できる時間てそんなにないですよね.今わたしは授業も雑用もない恵まれた状態ですが,それでも「コーヒーのみに行こうぜー」とか「ちょっとこのプログラム見てくれる」とか「昨日,おれの彼女がさあ」などといろいろあって仕事が中断されます.授業や雑用があったらこの比ではありません.

あと,集中してやる仕事ってはじめるにはかなりのエネルギーが必要ですよね.そんなエネルギーをためるのは大変なので,仕事がなかなか始められず,生産性が下がっているひとも多いと思います(わたしだけ?).

そういう事情を考えると細切れ執筆ってけっこういいと思います.短い時間で進むし,敷居が低いせいかはじめるためのエネルギーもさほどいりません.

とはいえ,おまえ今は時間あるんだから細切れに時間なんか使わず集中して仕事しろよというつっこみは悲しくなるのでやめてください.