翻訳のやり方

 昨日も書いたとおり今翻訳をやっています.具体的にどういう手続きでやっているかメモ代わりにかいてみます.訳しているのは,入門書の数章にわたるで範囲です.専門書や啓蒙書をまるまる一冊やる場合には少し違うやり方があるかもしれません.
 以下,順序に沿って書いてみます.

1.ざっと読む.
 流れや重要部分を頭に入れるためにざっと読みます.辞書をひいたりもしません.
2.頭から訳しはじめる.
 一文ずつどんどん訳していきます.切り離したり,くっつけたりしたほうが流れがいいところはある程度修正しますが,基本的にはとにかくがんがん訳します.言い回しはある程度気をつけますが,しばらく悩むようだったらそのまま直訳します.直訳部分や,言い回しが良くない部分は<< >>で囲んでおきます.なお,専門用語はきちんと辞書を引き定訳を抑えておきます.また,人名,固有名詞など読み方が分からないものは,専門家にそれを確認します.海外にいる利点は,すぐそばに聞ける専門家がいることです.

3.日本語だけを見てなおす
 英語の本文は見ずに日本語だけを見て,言い回しをなおします.

4.パラグラフごとのチェック
 各パラグラフごとに英語と日本語を対応させ,誤訳がないか,確認します.この3と4を何回か繰り返し,日本語がOKで,誤訳も見つからないようだったらそこでひとまずひと段落です.そのあと1週間くらい寝かせてもう一度確認して終了です.

 わたしは翻訳をするときに以下のことを気をつけています.なお,わたしは文芸作品とかは訳しませんので,専門書などを訳すときに気をつけることになります.

1.専門用語を使う.
 ここが実は難しいところです.もちろん専門用語ではなく平たい分かりやすい言葉で訳した方が,ただ読むだけだったら読みやすいと思います.でも,その場合他の書籍との対応付けが難しくなります.教科書や専門書の場合はやはり学術的な正確さを犠牲にした読みやすさには問題があると考えます.ただし,正確さと読みやすさは必ずしも矛盾するものではありません.わたしは読みやすさと正確さにうまくバランスをつけるため,あとでも述べますが,わかりにくくなりそうだったら補足を加えたりします.

2.英語のセンテンス構造にはあまりこだわらない.
 英語と日本語は違う言語ですから,横のものを縦にしただけではかなり分かり難いことがあります.わたしは関係詞節や接続詞節などの節構造を出来るだけ分解して訳すようにしています.

 なお,パラグラフの構造はくずさないようにします.ただし,英語の場合パラグラフ内は一般に,

paragraph statement →supporting evidence →supporting evidence 2 ・・・・(→summary)

という構造をとることが多くなります.この構造でsummaryがない場合,日本語にするとつながりが悪いことがあるので,指示的形容詞や接続的な一文を加えることもあります.

3.ある程度の省略,補足は躊躇なく行う.  
 読みやすくするためにある程度は付け足したりします.ただし,本文にないような事実をいれるようなことはありません.日本語の場合自明な主語や目的語は省略が可能です.一方,aとtheの違いで意味が変わるところや,指示代名詞が使われてわかりにくいところは補足が必要になると思います.また,イディオムをうまく利用した言い換えや欧米の常識に依拠したものなどは補足説明が必要になるでしょう.

4. 個々の単語レベルでの対応は重視しない
 センテンスやパラグラフのレベルできちんと訳が出来るなら,辞書的な対応関係はあまり重視しません.それをやるとどうしても読みづらくなります.

とまあこんな感じです.みなさんどうやってるんでしょうね.

今日のお仕事

・ちらつき実験と矢印追加実験開始
PSE実験地味に進行中
・翻訳を少し
・Eの論文を読む.