<HG玩具>同性愛者差別を助長と発売中止要請(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051223-00000051-mai-soci

ハードゲイ芸人,HGをキャラクターにした「黒ヒゲ危機一発」発売に抗議が出たという話.

Takashiさんのところで上のニュースを知り,みなさんのエントリーやコメントを読み,さらに抗議文(セクシャルマイノリティ教員ネットワーク http://homepage3.nifty.com/stn/)を読んで,すこし考えてみました.

セクシャルマイノリティ教員ネットワークからの抗議は

(1)同性愛者およびそれを連想させる人物を樽に入れ、剣で突き刺して「楽しむ」という玩具 の発売は、同性愛者に対する差別である。

(2)玩具で遊ぶ子どもたちに、同性愛者は差別して良いのだ、という意識を植え込む恐れの ある玩具である。
(以上,http://homepage3.nifty.com/stn/kougi2.htmlより引用)

のふたつにまとめられます.(1)については,そういう意見が出ることは理解できます.これは事実の解釈の問題ですのでそのような解釈があることは全く不思議でありません.むしろ当然であり憂慮すべき問題でしょう.一方,(2),すなわち,玩具の使用が差別を生むという因果関係の主張には,ネットワーク側も慎重な言い回しをしていますが,わたしとしてはかなり疑問があります.

(2)は,経験がもたらす悪影響を主張するものです.このような主張は古今東西からありますが,必ずしも説得力のあるものばかりではありません.例えば,ゲーム脳などは説得力のないものの典型です.この種の主張は,既存の意見に都合がいいものであったり,一見の最もらしさが伴うため,受け入れられることが多いのですが,たいてい共通した問題をはらんでいます.

良くある問題として

  1. 因果関係と相関関係の混同
  2. 事実の誤認
  3. 実証的裏付けの乏しさ
  4. 経験の影響の過大評価(それ以外の影響の無視)

をあげることができます.今回の件も,(2)の主張については上の4点から,わたしはセクシャルマイノリティ教員ネットワークの主張を受け入れることができません.差別と偏見について検討する場合,特に4,すなわち,経験の過大評価のために問題の本質を見誤り,解決を遅らせる可能性すらあると考えます.この辺については,後日もう少しきちんと書きます.

経験がもたらす悪影響,あるいは子供の教育の問題を出すことは,抗議の作戦としては効果的なのかもしれません.教員団体という性格上そこに焦点を当てる必要もあるのかも知れません.

しかし,わたしが考えるにこの抗議の本質は,教育や子供への悪影響にあるのではありません.むしろ,玩具に代表される同性愛に対する偏見と差別,そして,それに対して気分を害し,傷つき苦しんでいるひとがいることが本質ではないでしょうか?

自分が差別であると感ずることに素直に抗議し,それを受けた側も真摯に受け止め議論する.それが本質的な問題の理解と解決につながるのではないでしょうか?今回のような悪意というよりは,認識不足が主な原因だと考えられる場合にはとくにそこが大切だと考えます.子供への影響云々は,作為的で,本来の主張の正当性をかえって損なうかもしれません.


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