ポスドクの英会話:初級・中級・上級

私のようにポスドクから海外に来た場合には,1にも2にも英語が,特に英会話がいろいろな意味で重要課題になります。まず,会話を含めた英語の力を付けること自体が海外に来た最大の目的であることも多いでしょう。ほとんどの学問分野で,公用語は英語ですから研究者としてやって行くには英語は不可欠です。たとえ日本で研究を続けるとしてもある程度は英語力が不可欠です。それにもかかわらず,学習能力は10代,20代よりは落ちているので結構苦労するわけですね。しかも,日本にいる限り,専門分野について英語で話す機会ってのはほとんどありません。海外にでて30すぎてようやく始めるわけです。日本で大学院まで進んだ人ですとそういう人が多いと思います。

で,今回はその重要課題である英会話についてレベル分けしてみました。ポスドクなので研究をやっていくことが前提となっていますから,初級のレベルが通常よりは少し高くなっています。

初級

講演・発表
準備をすれば講演,発表ができる。ただし,発表原稿を書いてある程度暗記する必要がある。質疑応答には不安が残る。
議論
一対一なら自分の言いたいことが何とか伝えられる。相手の言っていることもわかる。ただし,一度では伝わらないことも多いし,わからないことも多い。グループでの議論はほとんどわからないし,その中で発言することもできない。
日常会話
How are you?のやりとりがうまくできるとうれしい。会話相手が気を遣って日本のことなどを聞いてくれるとある程度話ができる。
発音
ストレスの位置が不正確,あるいは日本語的に音節ベースの発音になっている。fやvなど日本語にない音の発音が苦手。「ア」の音に区別をつけられない。「L」と「R」を区別して発音できない。「W」の発音はたいてい通じない。
日常生活
買い物などには不便はない。ただし,不動産や保険の契約など複雑なやりとりではうまくいかない。
電話
何を言っているかほとんど理解できない。自分の発言も理解してもらえないことが多い。電話をかける前に何を言うか心の中で準備する。
他者からの評価
ネイティブから「英語がうまいね,どこで習ったの」と聞かれる。

中級

講演・発表
日本語での場合とそれほど変わらない準備時間で講演,発表ができる。質疑応答はたどたどしいこともあるがほぼ問題はない。ただ,長い講演だとすごく疲れる。本当に疲れる。
議論
グループでの議論も聞いている分にはわかる。発言もできる。ただし,発言を聞いている相手が,眉間にしわを寄せながらあからさまに「何を言ってるんだこいつ」という顔をするときもある。ただし,それを無視できるハートの強さが中級者にはある。
日常会話
時事ネタやうわさ話などもある程度できる。でも,集団ではなしていると会話の流れにはおいて行かれることが多い。流れを無視して発言して浮くこともある。しかし,それを気にしないハートの強さが中級者にはある。
日常生活
困ることはほとんどない。あるいは困った気がしないハートの(以下略)
発音
ストレスを意識できる。「ア」の音の違いを意識できるがたまに間違う。「L」と「R」を区別して発音できるが,取り違えることも多い。「W」の発音は通じないことが多い。「s」や「k」など日本語と似ているが,少し違う発音でたまに通じないことがあるのに気づく。
電話
困ることはほとんどない。電話をかける前に事前に何を言うべきか考えることはない。
他者からの評価
英語がほとんどしゃべれない日本人や他の外国人から「英語がうまい」とほめられる。ネイティブから「英語がうまいね,どこで習ったの」と聞かれる。

上級

上の項目すべてについて,ほぼネイティブと変わらない。あるいは日本語でやるのと変わらない。ネイティブから「英語がうまい」とほめられることはない(んじゃないかなと思う)。

さて,私がどこにいるのかというと中級です。下地があった上で1, 2年それなりにがんばると多くの人は中級くらいになると思います。でも,がんばらないと英語の力ってのびません。海外にいれば自然に上達するものではないです。

日本を拠点にして研究を進めて行く分には,読み書きがきちんとできるなら,会話の能力は中級くらいでもいいのかなという気がしています。もちろん高いに越したことありませんが,中級以上ってのは進歩もゆっくりですし,英語での教養ってのが関わってくるんで気長にやるしかないんですよね。しかも,ポスドクの年齢だと学習がやはり遅い。まあ,10代,20代にはじめてればもっとよかったのでしょうが,いまさら言っても始まりません。できる範囲ですこしずつのばしていこうとわたしは思っています。