Europsy:臨床心理士の国際基準

2週間くらい前までヨーロッパからお客さんが来ていました。臨床系の同僚(というか大先輩)もまじえた世間話で資格関連の話題になりました。で,そんときの話をメモ。

臨床心理関連資格の国際化がヨーロッパを中心に進んでいるそうです。EU統合に伴って,ヨーロッパ内での大学間の単位互換性,比較可能性が求められていることが根底にあります。それを2010年までにやっていこうといこう決めたのが1999年のボローニャ宣言で,心理学もその流れに乗っているわけです。

この流れの中で,ヨーロッパで共通する臨床心理学の学位をつくろうじゃないかという話があり,北米も含めて活発な議論が進んでいます。その資格を持っていればとりあえず加盟国の中では臨床活動を行う資格を認めましょうというわけです。ヨーロッパ起源の国の間では人材の交流が盛んですから,どこでも共通する資格の必要性がやはりあるのでしょう。

で,一応これでいくんだろうなというのが,Europsy, --the European Diploma in Psychology というやつで,予定としては来年からヨーロッパ32カ国で始まるそうです。内容をざっと見てみると,

  • 教育
  • スーパーヴィジョン
  • 職業経験

の3つをEuropean Federation of Psychologists' Associationに届け出れば,審査の結果,Europsy Psychologistとして認められるのだそうです。最低基準として,

  1. 最低5年間の大学で心理学の専門教育を受けていること
  2. 最低1年間,臨床活動についてスーパーヴィジョンを受けたトレーニングを積んでいること
  3. 自国およびヨーロッパの心理士の倫理規定に書面にて同意をすること

をクリアしている必要があります。日本はこのプログラムには参加していませんが,この基準を満たしていればヨーロッパでも働く機会が出てくるのかもしれませんね。

詳しく知りたい方は以下をご参照ください。

概要は以下の通り。

http://www.efpsa.org/pdf/Declaration-EuroPsy-2006.pdf

ヨーロッパ以外も含んだ細かい流れなんかはこの論文が参考になるかもしれません。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=pubmed&uid=16221004&cmd=showdetailview&indexed=google

さらに実際に使われるであろう申請書のモデルなんかもwebにあります。

http://www.europsy.fi/EuroPsy_en.pdf

で,こんなことを書いたのは日本の臨床心理系の大学院教育に国際的に見てもちょっと問題があるよなーと思うからなのでした。その布石とゆーわけです。