学会シーズンを終えて

9月の学会シーズンがようやく終わりました。日本国内の学会には結構久しぶりにきちんと出たのですが,なんか数年前と空気が少し違う気がしました。

なんつーか,ワクテカ修士の院生がカチコチになったり,変に前のめりになったりしながら発表している姿が少なかったですね。学会発表だ,すげーんだみたいな空気を出している人がついこの間まではけっこういたとおもいます。それがほとんどいない。

リクルートスーツみたいなのを来てる人は相変わらず多いし,見た目も修士ぐらいの人の発表ってすごく多いんですが,なんか落ち着いています。ワクテカ感が減ってるのは多少寂しい。皆さん,学会発表より,ともかく論文と言われ続けているからですかね?学会発表が軽くなってるのかなー。もっとも重いもんでもないんでしょうが。

08/24/2007

  • ずいぶん空いてしまった。
  • 身分関連の事務仕事。結構面倒くさい。あっちでコピーこっちでもコピー。さらにサーバーにデータ入力。んでもって,サーバーが遅い。本当に遅い。これはストレスたまるわ。
  • 翻訳。これがブログから離れている最大の原因かもしれない。第1稿まであとひと月はかかるかな。
  • B誌からの査読依頼論文をもう一度読む。イイ論文なんだけど,取り扱いが難しい。実験1が最高で実験2がいまいち。もったいない。実験1だけでスキッとまとめたらいいのに。どうコメントしようか悩む。クオリティーが高いのは間違いないんだけどこのままでは載せることが出来ない。

みなさんどのくらい頑張っているのかしら?隣の心理学者の生産性

休みで何となくネジがゆるんでいると,最近おれは怠けてるよなあとつくづく思います。でも,そんなとき昔の同級生の顔を思い浮かべると,あいつよりは結構頑張ってるよなあ,とも思います。でも,べつの同級生やバリバリやっているひとの顔を思い浮かべるとやはり怠けてるよなーとなるわけです。

まあ,仕事がうまく行ってたらこんなことは考えないんですけどね。最近,きちっと解釈できるデータが出てこないので,データが取れないこの時期は多少悶々としてしまうのでした。

そんなとき知りたくなるのは,はたして俺は本当に怠けているのか,頑張っているのか,どちらかということです。ここは心理学者らしくやはりデータから見てみるのがいいでしょう。そんなときに参考になったのがこの論文です。

Brynes, J. (2007). Publishing trends of psychology faculty during their pretenure years. Psychological Science, 18, 283-286.

アメリカでは大学に就職しても,はじめはたいていいわゆる任期付きです。テニュア(永久在職権)を手に入れるまで,若手は必死に頑張ると言います。アメリカではtenure pushということばや,tenure cliffということばがあります。tenure pushとはテニュアが取れるまでとにかくシャカリキに仕事すること,tenure cliffはテニュアが取れた後,崖から落ちたみたいになんにも研究をしなくなることです。まあ,そんくらいプレッシャーが強いんでしょうね。

ちなみにアメリカでは年に1-2本,査読付きの雑誌論文を書いていれば,数年後にはテニュアが取れるという迷信めいたお話があるそうです。今回の論文はこれをデータをとって確かめてみようという目的でした。

この論文ではアメリカの大学ランキングでトップ30にはいる名門大学(1)の教員を対象に博士号取得後7年間の発表論文数を調べました。アメリカのトップ30って言ったら,たとえるなら野球のメジャーリーグですね。数もだいたい同じくらいです。さて,心理学でのメジャーの選手たちはだいたいどれくらいのもんなんでしょうか?

今回の調査対象は名門大学における286名の教員でした(2)。そして,PsychoINFO, Science Citation Index, ERICといった日本でもおなじみのデータベースが査読付きの発表論文数を調べるために用いられました。

さて,結果です。286名全員の平均論文数は一年あたり1.58本でした。年度がますごとに論文数が増えていったそうです。なお,1970年代に学位をとったひとも1990年代に学位を取った人も平均論文数は大して変わらなかったそうです。最近,論文執筆へのプレッシャーが厳しくなっているという話もあったのですが,20年関わらないんだったら現実は少々違うのかもしれません(3)。

また,出版された論文のうち22%が単著論文,44%が第一著者論文,34%が第2,第3,,,第n著者論文だったそうです。まだ自分のラボが出来上がってない時期であることがよく分かります。学位を取ったばかりで,まずは一人でシャカリキになっているのかなという感じ。

さらに論文の質を見るために,論文数に対して雑誌のインパクトファクターで重み付けがなされました。論文数にインパクトファクターをかけるという単純なものです。例えば,インパクトファクター1.5のMemory and Cognition に3本論文があったら, 3 X 1.5 = 4.5という感じです。

このインパクトファクターで重みづけられた係数の平均値は11.75でした。これを論文数で割ると3.06となります。平均して,インパクトファクター3.06の雑誌に皆さん論文を出しているってことですね。

さて,だいたいこれがデータのあらましです。大まかに見ると上に出てきた迷信はそれほど間違っていないということになります。ただし,これが平均であることを考えると年間1本より少ないひともかなり大勢いることも指摘しておかなくてはなりません。まあね,若いうちはとりあえず1,2本くらいは書いておきましょうよってのが,データとともに示される指針になるかなといったところでしょうか?

この数値を見てどのようにお感じになるでしょうか?すごいと思うひともいれば思いのほか少ないと思うひともいるかもしれません。とりあえず私は自分と比べてみました。平均執筆数はほぼ平均値でした。第一著者論文の比率も同じくらい。でもねー,平均インパクトファクターがちょっと低い。もっともっと頑張れねばなりません。質を高めることが今後の目標

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(1)Harvard, UCLA. Michigan, Columbia などなど
(2)認知,社会,発達領域の教員のみが対象になりました。これまでの知見から,臨床系の教員の論文数は非臨床系より少なくなることが分かっているため,外したそうです。掲載雑誌の読者層を考えたのかもしれません。
(3)日本は全然違いますよー。若い人でポジションを取るひとはとにかくたくさん書いてます。昔は論文1,2本で就職できたらしいですが,今では夢物語です。でも,北のほうはまだそんな感じなんだよなー。不思議だ。

5/14/2007

  • 講義 X 2, 演習 X 1
  • 講義の準備
  • 時間論文。数日前に2巡目が帰ってくる。前回最大の問題とされたところは長大なrebuttalでクリアの模様。まあ,そこは先方の勘違いでしたからね。文面から判断するとエディターはもういいかなと思っている様子。レビューワーのひとりがまだ納得いっていないようなので,地道に改訂します。まあ,とにかく改訂すればレビューワーに戻さずacceptではないかな。

最近の事情

ひどく更新が滞っている昨今です。理由は結構簡単です。ブログを書くことにエネルギーを注げない,よーするにモチベーションの問題です。

このブログは,今のところ心理学や心理学に関する研究の紹介をする目的でやっています。全然そんな風に見えないかもしれないですがそうなんですよ。少なくとも今は。

わたしの普段の研究は直接的に社会貢献をするものではありません。それでも,公的な資金を直接的間接的に使って研究をしている以上,何らかの形で自身を社会につなげることが大切だと考えています。直接的な社会貢献を研究で出来ない研究者にできることは何でしょうか?ひとつには教育や広報的な活動により,研究活動や研究内容のおもしろさを伝えていくことだとわたしは考えています。私の場合は心理学が専門ですから心理学の分野でそういうことをして行けたらなと考えています。

実際,このようなことをブログで始めようと思った頃は,そういう社会への還元を全くしていなかったんですね。しかし,今は多くの時間を教育や広報的な活動に使っています。授業もしてますし,高校生やお年寄りを対象にした講演なんかもしますし,啓蒙書にもたずさわっています。こういう状態ですと,教育や広報的な活動へのエネルギーはもう十分に使っているような気がするので,そのひとつであるブログの更新に対してモチベーションが上がらなくてどうしてもとどこおってしまいます。こういうとネガティブに聞こえますが,研究とか本業の方で他にやりたいことがわんさかあるんですね。

というわけで更新のペースが非常に落ちておりますが,無理のないペースでぼちぼちやっていこうと思っています。

06/06/2007

  • 知り合いが出すフェローシップの申請書を読み,コメントを書く。とてもよい研究をしている。わたしもがんばります。
  • 動物注意実験3。プログラミング。プログラム自体は終了したので来週頭にパイロットで何回か走らせてみよう。
  • 手バイアス実験プログラム。これは簡単だからあっという間に終了。昔のを縮めるだけだからなあ。
  • 翻訳をすこし。
  • 夕方から歓迎会の予定