力強い文章

アフガンで亡くなられた伊藤和也さんのアフガニスタン派遣への志望動機書を読みました。文中に難しい言葉はひとつもありませんし,凝ったレトリックもありません。しかし,力強く,分かりやすく,心に響く文章でした。

ご冥福をお祈りいたします。

以下,http://www.asahi.com/special/08019/TKY200808270302.html より

私がワーカーを志望した動機は、アフガニスタンに行き、私ができることをやりたい、そう思ったからです。

 私が、アフガニスタンという国を知ったのは、2001年の9・11同時多発テロに対するアメリカの報復爆撃によってです。

 その時まで、周辺国であるパキスタンやイランといった国は知っているのに、アフガニスタンという国を全く知りませんでした。

 「アフガニスタンは、忘れさられた国である」

 この言葉は、私がペシャワール会を知る前から入会している「カレーズの会」(アフガニスタンの医療や教育の支援活動をしているNGO)の理事長であり、アフガニスタン人でもある医師のレシャード・カレッド先生が言われたことです。今ならうなずけます。

 私がなぜアフガニスタンに関心を持つようになったのか。

 それは、アフガニスタンの復興に関係するニュースが流れている時に見た農業支援という言葉からです。

 このこと以降、アフガニスタンに対しての興味を持ち、「風の学校」(海外で協力活動をする青年を育てるNGO)の設立者である中田正一先生(故人)の番組、偶然新聞で見つけたカレーズの会の活動、そして、カレーズの会の活動に参加している時に見せてもらったペシャワール会の会報とその活動をテーマにしたマンガ、それらを通して現地にいきたい気持ちが、強くなりました。

 私は、関心がないことには、まったくと言っていいほど反応しない性格です。

 反応したとしても、すぐに、忘れてしまうか、流してしまいます。その反面、関心を持ったことはとことんやってみたい、やらなければ気がすまないといった面があり、今回は、後者です。

 私の現在の力量を判断すると、語学は、はっきりいってダメです。農業の分野に関しても、経験・知識ともに不足していることは否定できません。ただ私は、現地の人たちと一緒に成長していきたいと考えています。

 私が目指していること、アフガニスタンを本来あるべき緑豊かな国に、戻すことをお手伝いしたいということです。これは2年や3年で出来ることではありません。

 子どもたちが将来、食料のことで困ることのない環境に少しでも近づけることができるよう、力になれればと考えています。

 甘い考えかもしれないし、行ったとしても現地の厳しい環境に耐えられるのかどうかもわかりません。

 しかし、現地に行かなければ、何も始まらない。

 そう考えて、今回、日本人ワーカーを希望しました。

Have fun!

lateral552008-04-28


この間まで西の方に出張して学会に出ておりました(写真参照)。

数年前までは学会ってなんか食傷気味だったんですが,最近はまた行くのが楽しみになっています。刺激を受ける機会が相対的に減っているのが原因なのかもしれません。

今回の学会ではノーベル賞級の著名研究者に捧げるシンポジウムが丸一日開催されていました。大物がずらりと並んでいて見ているだけで楽しかったです。

そこでノーベル賞級研究者の名言集で紹介されていたのが,


Have fun, or do something else!

という言葉でした。人柄を表すイイ言葉だと思いました。わたしも肝に銘じます。

ほかにも

It's five o'clock! Let's go and grab some beer!

というのもありました。これもまたよし。

「日雇い派遣」の全面禁止 民主、労派法改正案提出へ

http://www.asahi.com/politics/update/0215/TKY200802140336.html

わたしは賛成です。

日雇い派遣業なんてのは,大昔の「口入れ屋」の仕事なわけで,言って見りゃ一癖も,ふた癖もある人達の仕事だったわけです。縁もゆかりもない,頼るあてもない裸一貫の人達を「顔役」が面倒見る仕組みですよ。

そんなものをですね,これ幸いとばかりに平気で利用するなんてのはなんて言うんですかね,品がない

単に金を稼ぐ,利益をあげるというだけの発想は卑しい。どんな人にも社会を築く,維持するという視点がなくてはなりません。ましてや人を使う立場の人はそれこそを重視するべきでしょう。

ここ最近起こっている非正規雇用の増加は異常です。日本の社会システムは正規雇用者のために出来上がっています。したがって,非正規雇用者はひどく損をすることになります。健康保険だ,失業保険だなんてものをとってもまるで違います。なんとかまともな状態にしなくてはなりません。

そういったなかでとりあえず日雇い派遣を禁止するというのは第一歩としては評価できるとわたしは思います。さらに正規雇用率の規制とか,長期にわたる非正規雇用正規雇用へ転換することへの推奨なんかも目指して欲しいです。正社員よりずっと仕事が出来る長時間勤務のパート,バイト,派遣が山ほどいるなんて,大多数が正規雇用をのぞんでいることを考えると絶対おかしいですよ。

Europsy:臨床心理士の国際基準

2週間くらい前までヨーロッパからお客さんが来ていました。臨床系の同僚(というか大先輩)もまじえた世間話で資格関連の話題になりました。で,そんときの話をメモ。

臨床心理関連資格の国際化がヨーロッパを中心に進んでいるそうです。EU統合に伴って,ヨーロッパ内での大学間の単位互換性,比較可能性が求められていることが根底にあります。それを2010年までにやっていこうといこう決めたのが1999年のボローニャ宣言で,心理学もその流れに乗っているわけです。

この流れの中で,ヨーロッパで共通する臨床心理学の学位をつくろうじゃないかという話があり,北米も含めて活発な議論が進んでいます。その資格を持っていればとりあえず加盟国の中では臨床活動を行う資格を認めましょうというわけです。ヨーロッパ起源の国の間では人材の交流が盛んですから,どこでも共通する資格の必要性がやはりあるのでしょう。

で,一応これでいくんだろうなというのが,Europsy, --the European Diploma in Psychology というやつで,予定としては来年からヨーロッパ32カ国で始まるそうです。内容をざっと見てみると,

  • 教育
  • スーパーヴィジョン
  • 職業経験

の3つをEuropean Federation of Psychologists' Associationに届け出れば,審査の結果,Europsy Psychologistとして認められるのだそうです。最低基準として,

  1. 最低5年間の大学で心理学の専門教育を受けていること
  2. 最低1年間,臨床活動についてスーパーヴィジョンを受けたトレーニングを積んでいること
  3. 自国およびヨーロッパの心理士の倫理規定に書面にて同意をすること

をクリアしている必要があります。日本はこのプログラムには参加していませんが,この基準を満たしていればヨーロッパでも働く機会が出てくるのかもしれませんね。

詳しく知りたい方は以下をご参照ください。

概要は以下の通り。

http://www.efpsa.org/pdf/Declaration-EuroPsy-2006.pdf

ヨーロッパ以外も含んだ細かい流れなんかはこの論文が参考になるかもしれません。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=pubmed&uid=16221004&cmd=showdetailview&indexed=google

さらに実際に使われるであろう申請書のモデルなんかもwebにあります。

http://www.europsy.fi/EuroPsy_en.pdf

で,こんなことを書いたのは日本の臨床心理系の大学院教育に国際的に見てもちょっと問題があるよなーと思うからなのでした。その布石とゆーわけです。

東工大でも学費タダ

以前,東大の大学院で学費がタダになると言う話がありましたが,東工大でも同様の措置がなされるようです。

http://www.asahi.com/edu/news/TKY200712210405.html

このせいで優秀な院生の一極集中という問題が生ずる可能性が指摘されています。それはそれで問題かもしれませんが,それ以上にこんなことがニュースになること自体,大学院という構造のいびつさを示しているような気がします。それに一極集中は今にはじまったことではありません。

学費タダくらいで騒いでるのはおかしいですよ。

大学院教育に自国民がお金を払う国なんてほとんどありません。そんなことをしたら優秀な人材は集まりません。そもそも多くの国で大学院生はお金を支払うどころが,生活に困らないくらいのお金を受け取ることが出来ます。

大学院生は大学における研究,教育の中核的な役割を果たすべき存在です。そのような立場の人々を,お金を支払わせて働かせるのはどう考えてもおかしい。むしろ,彼らに対して対価を支払うべきです。

ただし,日本では教育の中核的な役割を大学院生は担っていません。そこにひとつ大きな問題があります。私自身は大学院生が教育の中核を担うようなシステムに変更すべきであると思っています。そうでなければ大学院生全員に給与など労働に対する対価を支払うことは難しいでしょう。理系の場合,研究の補助を行うことで相応の対価を受け取ることも可能でしょうが,文系ではかなり難しいでしょう。

大学院生を研究や教育の中核にしないから,大学教員は研究以外の仕事が増え,大学院生は生活に苦しみます。こんな状況で優秀な学生が大学院を避けるのはもっともな話です。こんな状況で留学生を増やそうなどと言っている偉い人たちの人の気が知れません。

つーかですね,授業料がタダになっただけでまともに生活も出来ず,将来も真っ暗なんでは優秀な人は対して集まりません。そもそも東大,東工大ならもともと学費免除,あるいは相当分のお金を受け取ることは難しくないはずです。

授業料免除なんてセコイ話ではなく,せめて学振DCくらいの待遇を大学院生の平均にせにゃならんのですよ。研究費のシステムとカリキュラムを変えれば可能だと思うんですけどね。

Baron-Cohenのトリビア

自閉症研究で有名なSimon Baron-Cohenと,Borat, Ali G, Brunoなどの迷惑キャラクターで有名なコメディアンSacha Noam Baron Cohenは,















実の兄弟だった。










どちらもとんでもないことを言ったり,やったりして,多くの人を驚かせたり,怒らせたりするところはそっくりだ。目立ちたがりのところもよく似ているらしい。ちなみに,全世界で公開される映画も作成するビックスターの弟にケンブリッジ大学の教授にすぎない兄は激しく嫉妬しているということです。

参照
http://en.wikipedia.org/wiki/Sacha_Baron_Cohen

http://en.wikipedia.org/wiki/Simon_Baron-Cohen

Diplomaのはなし

アメリカから人が来ていて,いろいろあって観光に連れて行ったりしていました。どうもわたしは研究要員ではなく接待要員として周囲から認知されています。

そのときdiplomaに関して,ちょっと話がかみ合わなくなりました。先方がすぐに察して補足説明をしてくれてから分かったんですが,diplomaってのは国によって意味合いが大分違うんですね。

diplomaの日本語訳は,広い意味で学位ってことでいいと思うんですが,アメリカではこれを学士号の意味でも使うようです。オーストラリアではこれが通常の学士号より低いものを指す言葉として使います。そういえば,むかし,研究室に来ていたドイツ人は卒業認定みたいな意味で使っていました。

さらに詳しく見てみると国によって大分違うんですね。

http://en.wikipedia.org/wiki/Diploma

勉強になりました。